<   2012年 08月 ( 1 )   > この月の画像一覧
ひとりぼっちのナミダ
 小学三年生のソウタは、友だちがいなくていつも一人ぼっちで遊んでいます。ソウタは友だちなんかいらないと思っていました。家ぞくもそうです。お母さんもお父さんも仕事がいそがしくて、ごはんの時も話を聞いてくれません。

 今日も、ソウタはいつものように自分のへやで一人でゲームをしていました。
 その時、ソウタの目の前のゆかから白いけむりがばしゅっとふき出してきました。ソウタはびっくりしてしりもちをついてしまいました。すると、白いけむりの中から、白いもじゃもじゃひげのおじいさんがあらわれました。
「お、おじいさんはだれ?」
びっくりして聞くと、
「わしは・・・『かみさま』みたいなもんじゃ」
とおじいさんは答えました。
「かみさま・・・?」
「ソウタくん、わしは一人ぼっちの子どもを放っておけないんじゃよ。だから、ここにやって来たというわけじゃ。ソウタくんのねがいを一つかなえてあげよう」
ソウタは信じられない気持ちでしたが、おじいさんがねがいをかなえてくれると聞いて、しばらく考えて言いました。
「ぼく以外の人を全部消してください」
おじいさんは少しおどろいたように、
「なぜ他の人を消してほしいんじゃ?」
と聞きました。すると、
「友だちなんかいらないし、家ぞくもいらない。他の人がいなくなってもこわくない。だから、消してください」
と、ソウタはきっぱりと答えました。
「わかった。
 ソウタくん以外の人間よ、消えてしまえ!」
おじいさんは持っていた大きなつえを、空にむかってふりました。すると、シャララランという音とともにへやがとても明るくなりました。

 ソウタはおどろいて目をとじていると、へやの中はいつの間にか元の明るさにもどっていました。おじいさんのすがたもありません。
「どうなったんだろう?」
ソウタは気になって外に出てみました。どこへ行っても、だれもいません。
「まあいいや、どうせいつも一人だし」
ソウタは近くの公園に行って遊ぶことにしました。
 夕方になって、ソウタはおなかがすいてきたので家に帰りました。
「お母さん、ごはんは?」
しかし、だれも返事をしません。
「あ、そうか、お母さんも消えちゃったんだ」でも、ソウタはおなかがすいてしかたがありません。何か食べ物がないかとさがしてみても、どこにもありません。食べ物もみんな消えてしまったようです。

 ソウタは、急にさびしくなって外に飛び出しました。
「だれか! だれかいませんか!?」
ソウタは一生けん命さけびますが、だれも返事をしてくれません。
「ううっ! うえ〜ん!!」
とうとうソウタは道のまん中で泣き出してしまいました。もちろん、だれも声をかけてくれません。

 その時、ソウタの目から涙があふれて、地面にポタッとおちました。すると、ソウタの体が半とう明になってしまいました。
 そして、まわりに大ぜいの人があらわれました。その人たちも半とう明の体で、まるでゆうれいのようにさまよっています。でも、その人たちには何も見えていないようです。

「あ、お母さんだ!」
ソウタは大ぜいの人の中からお母さんを見つけました。ソウタはお母さんにむかって走り出しました。
「お母さん? お母さん!」
ソウタがさけぶとお母さんの体が元にもどりました。体もすけていません。
 しかし、お母さんにはソウタのすがたが見えていないようです。
「あら、ここはどこかしら? ソウタ? ソウタはどこ!?」
お母さんがそうさけぶと、今度はソウタの体が元にもどりました。
「やったあ、元にもどった!」
ソウタはよろこんでガッツポーズをしました。しかし、他の人はまだもどっていません。半とう明のままです。
「あ、あれはお父さんだ、お父さん!」
ソウタとお母さんがいっしょにお父さん!とよぶと、お父さんの体も元にもどりました。
「なるほど、名前をよんであげれば元にもどせるのか」
それに気づいたソウタたちは、近所の人の名前を次々によんでいきました。みんなどんどん元にもどっていきます。
「やったぁ、みんな元にもどっていくぞ!」
「あれ? となりのおばあちゃんは? 一人ぐらしだったよね?」
ソウタのお母さんが言いました。ソウタははっとした顔で、
「あ、そうだ、となりのおばあちゃん! スエさんいますか?」
そうさけぶと、少し先の木の下にとなりのおばあちゃんのスエさんがあらわれました。スエさんは、おどろいた顔でソウタの顔を見ました。
「あらぁ、ソウタくん、どうしたの? わたしを元にもどしてくれたの、ありがとうね」
スエさんは笑顔で言いました。ソウタはうれしくなって、またガッツポーズをしました。

 もう半とう明の人はいなくなりました。
 その時、ソウタは遠くの方でよろこんでいるクラスメイトに気がつきました。数人でかたをだきあってよろこんでいます。ふと、ソウタはあの輪の中に入りたいと思いました。

「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ、よくやったな、ソウタくん」
ソウタがクラスメイトたちを見ていると、さっきの白いもじゃもじゃのひげのおじいさんが目の前にあらわれました。
「あ、おじいさん!」
「ソウタくん、一人でも本当にこわくなかったかな?」
ソウタは首を横にふって答えました。
「ううん、とってもこわくて、さびしかった」
「そうじゃろ、そうじゃろ。人間はみんなで助け合って、いっしょに生きていかないとダメなんじゃ。それをソウタくんに分かってもらうためにこのようなことをした。すまんかったの」
おじいさんはソウタに頭を下げました。しかし、ソウタはあわてて
「ちがうよ、おじいさん。あやまらなくていいよ。ぼくはおじいさんに大切なことを教えてもらえたんだ。あやまるのはぼくの方だよ」
と言いました。ソウタからそう言われたおじいさんは、笑顔になってソウタの頭をなでました。
「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ、そうかそうか。ソウタくんがわかってくれたのなら、わしもうれしいのぉ」
おじいさんにそう言われて、ソウタは顔が真っ赤になりました。
「では、わしはこれでもどるの。ソウタくん、また会えるといいの」
「うん! ありがとう、おじいさん!」
ソウタはうなずいて大きな声で返事をしました。
「では、さらばじゃ!」
そう言いながらおじいさんは手をふって、空へのぼっていきました。
「さようなら、おじいさん、ありがとう!」
「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ、元気での!」
おじいさんはだんだん小さくなり、とうとう見えなくなってしまいました。
 そのとき、ソウタは大きなあくびをしました。
「あれ、なんだかねむくなってきちゃった・・・」
ソウタは、その場でねむりこんでしまいました。

 ソウタが目をましたのはその次の日の朝でした。自分の家のベッドでねむっていたようです。
「ソウタ、学校におくれるよ! 早くおきなさい!」
お母さんの声が聞こえてきます。ソウタが飛びおきてリビングに行くと、お母さんとお父さんが、朝ごはんを準備してまっていました。
ソウタは、家ぞくみんなで楽しく話しながら朝ごはんを食べて、学校に行きました。きのうまでのことがうそのようです。

 その日、ソウタに友だちができました。ソウタはふしぎと友だちがほしくなって、自分からクラスの子に話しかけてみたのです。クラスの子とはすぐになかよくなれて、どんどん友だちがふえていきました。今まで友だちなんていらないと思っていたソウタにとって、信じられないような出来事でした。
「そうか、友だちって自分から作るものなんだ。友だちっていいものだな」

「きのうのあれは夢だったのかなぁ・・・?」
ソウタはそんなことを考えながら家に帰ると、庭に何か見たことのある物がささっています。
「あ、あれは、おじいさんが持っていたつえだ!」
ソウタは急いで庭に行き、つえを引きぬきました。つえには白い紙が結んであります。ソウタがその紙をほどいて広げてみると、
「友だちができてよかったの。これからもたくさん友だちを作っていい子に育つんじゃぞ。
             かみさまより」
「これは、おじいさんからの手紙だ。きのうのあれは夢じゃなかったんだ!」
ソウタがよろこんでいると、後ろから笑い声が聞こえたような気がしました。ソウタがふり返ると、そこにはだれもいません。
「あれ、つえがない、手紙も無くなってる!?」
ソウタは手に持っていたつえと手紙が消えたことに気づきました。
「ありがとう、おじいさん! ありがとう、かみさま」
ソウタは一度目を閉じてから、とびきりのえがおで空を見上げました。
                     おしまい
[PR]
by kazekaoru_y | 2012-08-01 22:55